「っあの…!さっきはありがとうございました……!!」
多目的室から退室するとき、わたしは勇気を出して彼に声をかけた。
「ああ、いいよ全然」
「こ、この高校受けるんですか……!?」
これだけはなんとしても聞いておきたかった。
「そのつもり。それじゃあ」
彼はそれだけ言って、多目的室を去っていった。
ハートを撃ち抜かれるとは、まさにこのことだと思った。
──わたし、あの人が好き。
わたしも絶対この高校を受ける。
あの人に近づきたい………!!
こんなにもだれかに感情が高ぶったのは生まれてはじめてのことだった。
その日から、わたしは本格的にダイエットをはじめた。
お父さんとお母さんにも宣言して、あれこれ協力してもらった。
空腹に負けそうになったことも何度もあったけど、あの人の顔を思い浮かべてなんとか耐え抜いた。
そして、高校入学式までに──わたしは見事、20キロ痩せることができた。
『新入生代表挨拶、二宮遥斗』
入学式の日、壇上にあがった彼の姿に………
わたしは呼吸がおかしくなるくらい、驚き胸が高鳴った。
二宮……遥斗くん。
ずっとずっと思い浮かべていたその人と同じ高校に入学できて………死ぬほど嬉しかった。
わたしは昔から勉強が大嫌いで、この高校には落ちてもおかしくないくらいの学力だった。
でも、ダイエットと同時に勉強もがんばって、なんとかギリギリのラインで合格できたんだ。