だが、俺はフラれたから二宮はむしろ喜ぶはずだ。

その上、“嫌い”なんて言葉、八つ当たりくらいで出るわけない。


まさかとは思うけど……俺と笑が付き合ってるとか勘違いしてねーよな……?


それならなんとなくつじつまが合うけど、まさかなあ……?


──その、まさかだった。


体育祭の前日に、俺はその事実を知った。


その夜、相田からいきなり電話がかかってきて、「協力してほしい」と言われた。


細かい説明はあとから相田に聞いてくれ。


俺はその頼みを断ろうかと一瞬迷ったが、受け入れることにした。


……笑に心から笑ってほしいからだ。


二宮と関係がおかしくなってから、笑はひとりでいるとふと悲しい顔を浮かべたり、無理に笑っているように感じることがあった。


だから俺は笑のためにあの放送を流した。


殴ったし、清々したわ。


あとはふたりで好きにやってくれ。


今度笑のことが傷つけたら、ただじゃおかねえぞ。


あーあ。

結局俺は、笑にフラレた上に、ふたりの仲を取り持ったいいやつになっちまった。


……………まー、………いっか。


『──竜っ!』


笑が俺に笑いかけてくれるだけで、


俺はこんなにも心が満たされちまうんだから。


*end*