冷たい幼なじみが好きなんです



「………アイツと別れたのか?」


自分の左腕に顔を伏せ、見上げることしかできないわたしと目線は合わせないまま………尋ねてきた。


「う、うん………?」


遥斗と扉に挟まれて、まったく動けないこの状況。

体が密着するかしないかのこの距離。

あの日公園では、真っ暗だったから恥ずかしさもドキドキも少しは薄れていた。

だけど………今は、チカチカと電気が光る明るい室内。

といっても、わたしへの光は遥斗に遮られてるんだけど……。

胸の鼓動がうるさくて、遥斗のまた謎の言動に戸惑って、曖昧な返事しかできなかった。


「………いつ、別れた?」


遥斗は相変わらず顔を伏せたまま。だけどそのほうがいいかもしれない。こんな状況で遥斗と目と目があったら、わたしは今度こそ心臓が口から飛び出してしまうだろう。


「えっと………さっきから言ってる意味がわからないんだけど………。わたし、誰とも付き合った覚えないよ………?」


遥斗の下で、ぼそぼそと答えた。


竜にも、別れろとかなんとか言っていたけど………、まさか遥斗って………。


「………………は?」


頭上で、信じられないとでも言うように発せられた。

遥斗は顔を起こしそのままわたしを見下ろした。

その表情も、疑いの色で染まっている。

遥斗の隠れていた左頬が竜よりも赤く腫れていることに気がついた。

………竜が言っていたとおり、倍返しだ。