冷たい幼なじみが好きなんです



『この前無理矢理ヤろうとしたら、泣きわめくし。
これだから処女はめんどくさ──ガタタタッ』


普段の竜の口からはあまり出ないような言葉が途中で止まり、その代わりにイスが転げるような大きな音が鳴り響いた。隣の優香がその音に驚いて肩をびくりと上げた。


『…っざけんなよ、お前。
笑のこと傷つけんなら、今すぐ別れろ』


──どきん!と心臓が天まで跳び跳ねた。

やっぱり、竜と話しているのは遥斗だ。

怒りで震えるような声。

遥斗の口から発せられている“笑”という名前は、わたしのことで合っているのであろうか。

そうだとして……“別れろ”って、いったいなんのこと……?

クラスメイトの目線がチラチラとわたしに向いて、わたしはどこに視線をやったらいいのかわからなくなった。


『いって……。ハッ、笑わせんなよ。傷つけてんのはお前のほうだろ?笑はお前のこと、大切な幼なじみって言ってたぞ。それなのにお前は、笑に嫌いだって言って突き放して──』


やはり“笑”というのはわたしのことのようだ。

どうして遥斗と竜がわたしの話をしてるの……?

しかも、なんで学校中に放送されているの?

まったく頭がついていかないよ──


『──っ嫌いなわけ、ないだろ…!』


竜の言葉を遮ったその苦しそうに訴える遥斗の声が、スピーカーごしにわたしの耳へと一直線に飛んできた。