冷たい幼なじみが好きなんです



「っえ?なに…!?」

わたしは黒板を爪で引っかいた音とか砂嵐とかそういう類いの音が苦手で、耳を両手で塞ごうとした──


『──……は?もう一回言ってみろ』


……………え?


わたしの耳はついにおかしくなってしまったようだ。

たった今、スピーカーから流れてきた声が……遥斗の声に、聞こえたんだ。ものすごく、低い声。そんなわけないのに。


『…だからさー、幼なじみのお前から言ってくんねえ?高校生でヤることくらい、普通のことだって』


「………笑、ちゃん。今の、桂木くんの声に似てない……?」


優香も、自分の耳がおかしくなったと思ったように自信なさげにわたしに確かめるように言った。


「う、うん。竜だよね」


声も口調も、竜にそっくりだ。まるで、相手を挑発するかのような口調。竜はよくわたしのことを挑発してくるけれど、それとはちがう、いつもの竜らしくない口調。

優香もそう思うってことは……わたしの勘違いじゃないってこと──?

いったいなにが起こってるの?

今教室にいるクラスメイトたちも、スピーカーから流れてくる声に何事かというように注目している。