初っぱなと言っても、わたしたちのブロックは順番が最後である。それは、ブロック長のくじ引きで決まったんだ。
最初のブロックが一番緊張すると思うけど、最後は最後なりにもっと緊張する!!
「間違えたらどうしよう~!」
卵焼きをごくんと飲み込んだ優香が、不安げに眉を下げた。
「大丈夫!!あんなに練習したんだもん、絶対上手くいく!!優香ならできる!!」
「笑ちゃん~!!…わたし、笑ちゃんみたいな人になりたいな」
「……えっ?」
よっぽどわたしより優れている優香からそんなことを言われ、思わずぎょっとしてしまった。
運動神経をほめられたことはあるけれど、わたしみたいになりたいと言われたのは初めてだった。
「……昨日、相田さんのことかばった笑ちゃん、すっごくかっこよかった。わたしもあんな勇気のある人間になりたいなって思ったの」
優香はわたしを見つめてそう言った。
「──なあなあ佐倉、中野。竜のやつ知らねえ?」
そのとき突然、後ろから竜の仲のよい男子が声をかけてきた。
「竜?知らないよ?優香は見た?」
「ううん、見てない」
「まじか。一緒に中庭で飯食うって言ってたんだけどな。どこ行ったんだよあいつー」
わたしたちが答えると、男子はそう言いながらお弁当箱片手に教室をあとにした。