「わたしだって………遥斗なんて、いなければよかった……」


遥斗がいなかったら、こんなに悲しくて切ない気持ちにならずにすんだ。
遥斗がいなかったら、こんなに苦しくて胸が張り裂けそうな想いせずにすんだ…。
遥斗がいなかったら、わたしは竜を選んでいただろう。
遥斗の存在がわたしのなかで大きすぎるんだ。
遥斗以上の人なんて……。
だからこそ、遥斗なんて、いなければよかった。
遥斗がいなければ………。


「…そーかよ」


冷たくつぶやいて、足元に落ちている紙袋を拾い上げた。


「じゃあな」


その吐き捨てた“じゃあな”に、“わたしたちの縁”を切るということ、わたしたちがこれまで築き上げてきた思い出をすべて最初からなかったものにするということを、わたしはわかっていた……。


遥斗……ばいばい。