その手があまりに優しくて、余計にあふれて止まらない……。


「やだよ…」

ヒクヒクとなりながら、言葉を紡いだ。

泣くのは遥斗の前だけにしろだなんて……そんなのぜったい守りたくない。


「…なんでだよ」


少し不満げにつぶやく遥斗。

どうしてわからないの?

そんなの決まってるじゃん……

「……っ遥斗の前では、泣き顔より、笑顔でいたい…。だって、可愛い自分でいたいから……。前みたいにわたしがどうでもいいこと言って…笑い合いたい…、遥斗の笑顔を見たい…。めんどくさそうにしていいから、うるさかったらうるさいって言っていいから…前みたいに…わたしのことを見てほしい…、笑って呼んでほしい………」

「……………」

次から次へと涙と共に、胸の奥底にしまっていた本音が止まらない。

こんなこと言ったって、遥斗は迷惑だって、分かってるのに──

遥斗はわたしとの距離をくっつくくらいにつめて………わたしの顔を、ゆっくりとのぞきこんできた。

目の前に遥斗の綺麗な顔があり、驚いて目をぱちくりとさせた。


「な、なに………!?」


「……ほら。見てる」


まるで焼かれてしまうんじゃないかっていうくらい、真っ直ぐの瞳で、じっと見つめられ………


「………笑。」


透き通るような心地いい声で………わたしの名を呼んだ。


「………っ………」

いったいいつぶりだろう。最後に呼ばれたのは、思い出せないほど前だ。

驚きすぎて涙もピタリと止まり、距離が近すぎて、ドキドキしてうまく呼吸ができない。

だけどそれ以上に嬉しい気持ちで胸がいっぱいでたまらなくなった。

“お前”じゃなくて………“笑”って呼んでくれた………。