「っ………うるさい…!!」
──どんっ!と、百合ちゃんは、両手で思い切りわたしの肩を押した。思いがけなくてバランスを崩し、視界が揺れたと思ったら地面へと尻餅をついてしまった。
え………?
思考がまったく追い付かず………ただ百合ちゃんに、見下ろされた。
「遥斗くんは自分のもの、みたいな顔しないでよ…!!」
泣き叫ぶような声。
百合ちゃんの顔も………泣きそうになっている。
「わたし、そんなつもりじゃ…っ!」
そんなつもり、あるわけない。
だってわたしは遥斗に嫌われているんだ。
遥斗と百合ちゃんこそが、相思相愛なのに…!!
百合ちゃんはさらに、吐き出すように言葉を続けた。
「っ……わたしは遥斗くんに見合う女の子になりたくて、痩せて、綺麗になって、勉強も頑張った……!やっと……っやっと付き合えたのに……!!」
百合ちゃんは中学のとき今みたいに痩せていなくて、成績もよくなかったと言っていた竜の言葉を思い出す。
百合ちゃんは遥斗のために………努力したんだ。
百合ちゃんの瞳から………ガラスの宝石のような、涙がこぼれ落ちた。
「っあなたの存在が邪魔なのよ………!!!」
ぐさり、と、ガラスが胸に刺さったような感覚だった。



