校舎を出ると、生ぬるい空気がわたしを包み込んだ。
これからギラギラと太陽が照りつける熱い夏がはじまると思うと若干憂鬱になる。
暑いの寒いのもいやだ。ちょうどいい気候と気温がいい。そんな贅沢ばかり心に浮かぶ。
ふああと二酸化炭素が凝縮された大きなあくびをまわりにだれもいないからといって盛大に空気中にぶちまける。
教室だったら口を手で押さえるけれど、今は両手が塞がってるんだもん。だれに言っているのか、心のなかでそんな言い訳をする。
「──うざいんだよお前ッ!」
今わたしが歩いている道は完全にひとりだと思い込んでいたために、焼却炉がある角の向こうからそんな女と思われる怒り声が聞こえてきて、わたしの肩はビクリと上がった。
……え!?なにが起こってるの…!?
角の手前で立ち止まり、ひとりあたふたしてしまう。
まさか、こんなところで喧嘩…っ!?
「うちらが3人で装飾したいってことくらい、わかるだろ!!」
3人…?まさか、3体1…!?
装飾って、もしかして運動会の役割のこと…?
「それは、ジャンケンで公平に決めたはずだけど…」
先ほどからのあきらかな喧嘩声ではない女の子の声も、聞こえてきた。
聞き覚えのある綺麗な声だった。