「──ありがとうございました〜」
その声を背に自動ドアをくぐる。
たった今受け取ったCDの入った袋を胸に抱いて、ウキウキした気持ちでお店を出た。
ここから家までは約30分。ドラマ1話分もないその時間がひどく待ち遠しい。
駅へ向かう足は自然と早足になって、しまいには軽く小走りに。
ホームへついたと同時に入ってきた電車に乗り込んだ。
ガタンゴトンと15分ほど電車に揺られ、最寄り駅で降りる。
そこから10分ほど歩くと見えてくるのは10階建てのマンション。
そのマンションの5階があたしの家。
エレベーターを使って5階まで上がるから、ボタンを押して待ってたら…
誰かがあたしの後ろに立った。
振り向いてないから全く誰かも分からないけど…
甘いのにちょっと苦いようなグレープフルーツシトラスの香りがふわりとして。
素敵な香りをつけてる人だと思った。
