蒼の花と荒れる野獣


「…あいつらにも事情があった。行かなきゃ行けない事情が。そうじゃなきゃ行かねえさ」


「それってなんの」


「……話してもいいけど、琢磨のご機嫌が斜めだから。琢磨の話を先に聞いてやってくれ」

「はあ?だれが、ご機嫌斜めだと?バカにしてんのか?」

明らかに不満げな琢磨がチッと舌打ちしながら勝哉を睨んだ。

「はいはい。なんでもいいから、とにかく説明して」

そんなことやってなくていいから。

「なんでもいいって、お前な」



「琢磨」



「チッ…わかったよ。どこまで話したっけ」

言い足りない様子だった琢磨だけど、さすが今年で40歳。

イラつきを小さく自分の中に収めた。

「えーと…スカウトが来ることもあるけど、警戒してなきゃいけないみたいなことまで」


そうだそうだ、と言った琢磨のギラリと闇を持った目があたしに向いた。