「スカウトってのはな、うち、獅龍から向こうで即戦力となりそうな人間を引き抜くことだ。そっちで、マフィアの一員として育てていくための研修やなんやら受けて、世界を跨ぐでかい男にするっていうのが向こうの言い分やな」
ガハガハ勝哉は笑うけど、それは正式に向こう側の人間になるってことだ。
2度と、表の世界には戻れなくなる。
あたしが知らないところでそんなことが起こっていたらしい。
「あいつらが引き抜くのは決まって、もらい手がいない孤児。それでもって圧倒的な強さをもつ人間。総長とか副とかしてたやつの中で、選ぶらしーぞ」
「獅龍からも何人か行ったわけ?」
「そ、行ったさ。和佳菜が向こうに行ってる間に2人な。出てった次の日から未だに連絡取れねえけどな」
それ、は。
「死んでるかもな、あいつら」
「死ぬって」
「こっちはまだ遊び半分でやれるからいい。でも向こうに行っちまったら何もかも消えるんだ」
消える。
その言葉はとても重いものであるのは、あたしもよくわかっていた。
「戸籍上は死んでても生きてたり。自分の戸籍誰かに売ったり。そんなことがある世界だ。だから、そういう話が来たら、俺らは全力で止める。なにもかもなくなるぞって、必ず言う。大抵はそれで諦める。でもあいつらだけは諦めなかった。いや、あきらめる事が出来なかった」



