「あの喧嘩?」
「あれだよ、Beastとの……」
こそりと聞こえた琢磨の耳打ちに、ああと、頷いた。
もうあれは対等な喧嘩ではなくて、ただのbeastの暴走だったけど。
「ああ。そう、見たよ」
「怖くなかった?」
「どこが?」
暴れた野獣をみても何も感情は動かなかった。
あれが、怖い?
分からない、翔真の気持ちが全くと言っていいほど分からなかった。
「怖くないの?」
「別に」
「へぇーー!すごいなぁ、あれをみても怖くないなんて。僕、直視できないかも」
「翔真だって喧嘩するでしょ」
あなただって暴走族のOBなんだから。
「僕とは次元が違うの!もし、間違って見ちやったらもう、多分震え上がって僕泣いちゃうよ」
泣くなんて大げさな……。
とは思ったけど、本当に泣きそうな顔をしている翔真を見たらなにも言えなくなった。



