「おー!和佳菜、お帰り」
ソファに腰掛けて、ガバガバとビールを飲む千歳にいちゃんが笑顔で手を振った。
この家の主、千歳にいちゃん。
明るくて、お酒がとても強い、優しい人。
「着替えたんだな」
そう、昌さんにはなにも指摘されなかったけれど、今あたしが着ているのは琢磨の服だ。
Tシャツとショートパンツを借りたんだけど、琢磨は身長が180近くあるから、もうこれはワンピース。
ショートパンツもショートじゃなくなってて、太ももの真ん中あたりの丈になっていた。
「お似合いだぞ。和佳菜」
「似合っても嬉しくないわね」
そうか、いいと思うけどなあ。
と彼は呟いていたけど、不意に。
「お前とは、昨日ぶりか」
と話題を変えた。
「そうね。昨日は散々うちを荒らして行ったんだから、ちゃんと片付けてもらうわよ」
「えっ」
「なに?曖昧にできたとでもおもってるの?琢磨には話してるけど、ちゃんと片付けてもらうから」
「それは、なんとか」
「ねえ、千歳にいちゃん。自分のものは自分で片付けるって、親に言われてこなかったの?」
「……片付けます」
「よろしい」
全く、千歳にいちゃんは出会った時から変わらず、子供っぽいな。
まるであたしが躾をしてるみたいじゃないか。
まあ、体制逆転してるのは楽しいけど。



