「まあ、でもママが言いたいことだって、昌さんなら分かるでしょう?」
『普通の女の子と同じ生活をしてほしい』
ママがあたしに言った、この国へ来ることをあたしが決めた言葉。
「そうだね。俺も同じようなことを願ってたから。今日だって、本当はここに来ない方が良いって、琢磨に言ったんだけど」
「言わなくても分かるわ、どうせ琢磨のわがままが発動したんでしょう?」
琢磨が心配する気持ちはわからないわけじゃない。
人の気持ちが分からないあたしが、琢磨の気持ちが分かるなんて奇跡に近いのだけれど。
“あんなこと” が起きたあたしを出来るだけ長く側に置いておきたいのだろう。
もう傷つかないようにと。
だから、琢磨のことも責められないあたしがいる。
でも、昌さんのいうことも理解しているつもり。
だってここは。
かつて、最強と呼ばれた12代目獅獣の溜まり場だから。



