「琢磨さんに姪なんていたんですか」
「俺、まだ若いんでね。見えねえだろ?」
40過ぎのおじさんが何をいう。
「は、はあ」
綾もぽかんとしている。
それはそうだろう。
見えねえだろ、と言われたら、答えに困るに決まってる。
だって、
「琢磨は十分すぎるほどおじさんに見えるよ」
もさもさと生えている髪の毛は明らかに不潔さを漂わせるし。
無精髭は老け顔の琢磨に似合いすぎて、もはや50代のおじさんにしか見えない。
これのどこが若いのだろう。
「は?和佳菜、お前この俺に喧嘩売ってんのか」
「売ってないわよ。あたしが喧嘩売ったところでかてないのは目に見えているんだから。ただ、事実を言ったまでよ」
「あのなあ、和佳菜。こういうのは、大人をたてるもんなんだよ。わかるか?」
「少しもわからないし、わかりたくもない」
あたしが琢磨をたてるときが来たのなら、その時はきっとこの世は終わっているだろう。
「あ、あの!」
「なに」
あ、琢磨とあたしの声が重なるなんて、珍しい。
「いまいち理解できてねえんっすけど」
「いい加減しな!」
そんな怒号が響き渡ったのはいうまでもない。



