「さて、綾。お前はここで言う自覚を持ってたよなぁ?」
綾に向き直った男は、じろりと彼を睨んだ。
「自覚?」
「姫にせざるを得ない状況にしてるんだろ。さっきこの女にご丁寧に説明してあげてたくらいだ。お前はそれだけ、この女に本気ってことでいいんだよな?」
「本気…まあ、そう考えてくれ」
一瞬考えるようなそぶりを見せた綾だったけど、すぐに頷いた。
それを見た男はギロリを再び睨む。
「千夏の場所までこいつに奪わせるつもりか?」
「お前は、千夏ちゃんに固執しすぎだよ。別に、千夏ちゃんの居場所をうばうつもりはねぇよ。和佳菜には、新たなポストを用意するつもりだ。ただ……」
「なんだ」
「和佳菜は面白い女だ。きっとお前が気にいるような、決まったことは絶対に曲げない、そんな女だ。お前と気が合いそうだよ。それだけは覚えとけ」
ニヤリと笑ってそういった綾に、男は顔を歪めた。



