「ならないなんて、言えないけど?」
しらない綾は、あたしを誘導する。
姫に、特別な存在になれと。
「なに言ってるの。みんな反対してるし、その人…Beast?も嫌なんでしょう?あたしもなりたくないし、一件落着じゃない」
そして、彼らを知らないあたしもまた誘導される。
「違げぇんだよ、和佳菜。お前は状況が分かってねえ。ここはロンスターダントだ。ヤクザや暴走族にいるような奴らが普通に歩いてる街だ」
あたしはいつ間違えたのだろうか。
「だから?」
いつママとの約束を破ったのだろうか。
『和佳菜には、不安な世界で生きて欲しくないの』
あたしは、忠実に、その約束を守っているはずだった。
「お前には話してねえけどよ、俺らは暴走族の人間だ。俺は副総長。そんな人間がお前を姫だと言ったらどうなる?」
ああ、もうだれの声も聞こえない。
「正直どうでもいいんだけど」
だけど、その中ではっきり。
「ここで姫宣言したら、お前は一生ヤクザにつけ狙われるってことだ。いい加減自覚しろ」
この嫌な予感だけがわかったんだ。