目の前の死んだ黒い大きな瞳がギョロリとこちらを睨む。
だけど、不思議とそれが寂しそうに見えた。
あたしの目、おかしくなったのかもしれない。
目の前のこの人はたしかに睨んでるはずなのに。
「その言葉を二度と発するな。哀れまれるのは、嫌いだ。次そんなことしてみろ」
「お前の顔面潰してやるよ」
その目は彼の本当を表していて。
本当にやられるかもしれないと、息を呑むほどだった。
「…どうぞ、ご自由に」
その目はやはり寂しげで。
とても見ていられなくて、目を逸らした。
「お前、殴られたいのか?」
「誰があんたに殴られたいと思うわけ?思ったことを言ったからって、そんな風に捉えられるなんてごめんなんだけど」
バカみたいな発言に呆れたが、あたしはそれ以上何も言わなかった。
それ以上言ったら、今度こそ殴られるかもしれない。
調子に乗るのもこのくらいにしておこう。