「仁はね、獅獣はね、大切な人達なの。あたしに、元気を取り戻させてくれて、暖かくて優しい人達。だから、またここに戻ってきたい」

こんなこと、仁の顔を見て絶対に言えない。

後ろにいてくれて、本当に良かった。

「和佳菜…」

「今のあたしはきっとまだまだ弱くて、足りないところがたくさんあるから、イギリスの人達と向き合って、バカマークなんかに影響されないようになりたいのよ。そして、ママのいる国を愛せるようになりたいと思う」

ずっと願いの1つでもあった。

あたしは昔からママと過ごせなかった。

それはママがあたしのために頑張ってくれたからであって、そこについて不満はない。

だけど、寂しくなかったわけではない。

ママのいない夕食。

グラマ(grand Mother:祖母)が側にいてくれても、やっぱ好きなのはママだから。

そんなママのいる国をいつまで憎んでもいられないから。

「…ねえ、仁。貴方は賛成してくれるでしょう?だって貴方は、“あたしのしたいようにすればいい”ってそう言ってくれたんだから」

振り返って、後ろにいる彼にそう微笑んで見せた。

あたしはとても意地悪で、彼の希望には少しも近づかなかったけれど。

だけど、決意は変わらないと、そう、言いたかった。