「ママ!」

慌てて、外に出ると、ママは車の前で携帯をいじっていた。

そして、あたしの姿を認めるなり、にっこり微笑んだ。

「ちゃんと話し合えた?」

それに辛うじて頷くと。

「じゃ、行きましょうか」

あたしに背を向けて、車に乗り込もうとした。

言わなきゃ、早く言わなきゃ。

待って、だめ、行かないで。

声がうまく出なくて、つっかえて、息の仕方がわからない。

それでも必死に、結局叫び方さえもよくわからないまま、懸命に。



「待って!ママ」


やっとのことで出た声は震えていたと思う。