「お前は、ママにその思いを伝えたか?」
「…それは」
「ママに俺らと一緒にどれくらい居たいか、きちんと伝えたのか?」
「……そんなの、言わなくたって」
「伝わると思うなよ」
低く、おぞましい声が、誰もいないレストランに響きわたる。
「親子だって、なんだって、結局のところ、言わなきゃなんも伝わらねえんだよ。察するなんて、無理言うな」
「…仁」
「ちょっと携帯貸せ」
机の上にあったあたしの携帯を、さらりと奪うと、どこかに電話をかけ出した。
「…もしもし、はい。はい、……その通りですが。…………え?」
電話口を抑えて、仁があたしに言った。
「…和佳菜、ママさん今、そこにいるって」