仁は冷静だった。
怖いほど淡々と、あたしに話をしようとする。
「意味がわからない」
嘘よ。
本当は何となく、分かってる。
「守るものは少ない方がいいでしょう?」
「守るものが遠くに行ったら、余計に迷惑だ。護れるものも、護れなくなる」
「だから、除外して?」
「拒否する」
貴方は優しい人だから。
「無駄な責任感は捨てて」
「無駄?責任感に無駄なものはない」
「貴方の押し付けるものは、今のあたしには邪魔なものよ」
「…だから?」
「え?」
「邪魔だから?迷惑だから?和佳菜はやめてほしいのか?」
「…そうよ」
知らないでしょう?
「嘘つくなよ」
「嘘じゃない」
「嘘じゃないなら……」
あたしが貴方に心を揺さぶられていることを。
早くも、帰りたいと嘆いていることを。
まだ、国から出ても居ないくせに。
「なんで、泣いてんだよ」
この涙の意味を、貴方は知らない。



