そのための犠牲は厭わない。
彼が毎日忙しそうだったのも、あの倉庫に長くいないことも。
全ては守る為だったことを、知っている人はきっと少ない。
あたしだって、この事を知ったのは最近だ。
思わぬところで知ったのだ。
それを口外しないと、教えてくれたその人と約束したけれど。
「仁」
守るものは少ない方がいい。
貴方の努力は見えた方がいい。
「…俺はお前に戻ってきてほしい」
貴方はきっと分かっていない。
あたしがどうしてあの倉庫から逃げ出したのか。
「…あたし、もう今日立つの」
「知ってる」
「もう手遅れなの」
「知ってる」
「じゃあ!」
「それでも」
遮るように仁が言った。
「お前の中に俺らがいてほしい」