「和佳菜のお祖父様にあたるミズシマ化粧品会長は随分と、家柄や地位で判断なさる方だと、聞いたことがあります。貴女様は、その追求を案じて、一時的にでも俺らから和佳菜を引き離したのではないかと」

確かに、お祖父様はそんな方だ。

すごく礼節に厳しい人。

ママはあたしのことを考えて……。


「和佳菜、仁君とまだ話しきれていないんじゃないの?」

「え」

ぼうっとしていたから、ママの怖い笑みに気がつかなかった。

「そんなわけ…」

「じゃあ、仁君がここまでする理由は?」

分からない、わけではない。

そこまで鈍感ではなかった。

「…貴女だけが納得したって、それは解決にはなっていないのよ?」

追い討ちをかけるように、ママが時計を見た。

「そうねえ、ここを出発するまで、あと2時間あるか、ないかくらいね。荷物はクルマのトランクに積んで置いてあるから、すぐに空港へ向かえるし。…ママはドライブしてくるから、ここでお話ししなさい」

「…あ、あのママ?あたしは」

「悪あがきもいい加減よしたら?」

だめだ、ママは本気だ。

その目が物語っている。