あたしは助手席、ママは運転席に座って、ママのいうカフェへ向かう。

本当にここら辺にカフェなんてあったかしら?

あるとしたら、高級レストランくらい。

その時。

見覚えのあるバイクが、車の横をすり抜けた。


「和佳菜…」

「ママ、気にしないでおくから。今日だって断ったんだから、次やったら警察にでも突き出すわ」

それまでは黙って見ておくつもり。

最近はずっとそうだったのだし、今に始まったことではない。

あたしに直接害があるのなら、それなりの対処をするし、考えるけれども今はそうじゃない。

「…そうね」


ママの力ない微笑みに気がつかないふりをして、静かに目を閉じた。





「わあ、綺麗」

「本当ね」

隣でママがにっこりと微笑んだ。

煌々と輝くシャンデリアに、心地好さそうなアイボリーのソファ。

紅い絨毯が敷き詰められている床。

想像していたカフェとは、…かなり違ったけれど、こういった雰囲気も好きだ。


流石だ、ママ。

ここはカフェではないけど。

おそらく、高級レストランだけど。

こんなところに高校生だけで来るはずがない。

そんな天然なママがあたしは好きだった。