出来ない。
そんなの出来ない。
関わらないなんて、結局は出来ないじゃないか。
笑っちゃうね。
どれだけ時間が経っても、あたしはどうせ変わらない、変わることなんか出来ないのだから。
そんな自分に嫌気がさした。
あたしはロボットだ、っていいながら、隠してきた本音を。
久しい顔に会って、殴り続けているあの男に会って。
変わりそうになっている自分を。
お願い、今日だけなの。
今日だけ、感情が戻った、素直で嘘がつけなかったあたしに。
戻らせて。
「お前、誰だよ」
殴り続けていた男が手を止めて、聞いてきた。
だけど、知り合いはそちらではない。
「2時間前ぶりね」
「……誰だ、お前」
不機嫌そうに睨むその男は。
どうやら物忘れが激しいらしい。
「あれ、少し前まで学校で会っていたのに。もう忘れたの」
彼の耳元で囁く。
あたしが入ってきた理由。
「放課後ぶりね、…綾」
それは、止めていた男が高岡綾だったから。



