「和佳菜…」
切なそうな仁の声で急に静かになった。
ジワリと視界がぼやける。
泣くな。
あたしが泣くな。
突き放すのはあたしだ。
ないていいのは仁や、獅獣の仲間たちだ。
あたしに泣く資格などない。
ゆっくりと、階段を下りた。
カツンカツンと、その降りる音で虚しさが更に増す。
「…さようなら」
振り向いたその景色を。
あたしは決して忘れないだろう。
絶望、悲しみ、怒り。
彼らのその瞳にある、様々な気持ちを。
あたしは忘れてはならないと思う。
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