突然のわらい声にあたしだけじゃなく、仁さえも目を丸くしている。

「…菅谷、お前和佳菜と会って気が狂ったのか?」

仁がそう言いたくなるのも分かる。

常に静かな微笑みを浮かべている菅谷さんが。

感情を大きく表現することがなかった菅谷3が。

大きな声で笑っていたのだから。

俄かに信じられない。

「はは。失礼いたしました。ですが、気など少しも狂っておりませんよ。それを言うのであれば仁さんのほうでは?」

「は?俺が?」

「はい。和佳菜様と久しぶりにお会いになられてから、仁さんは毎日が楽しいようで。和佳菜様とおられる時が1番笑っていらっしゃいますよ」

「そうなんですか?」

「おい、お前は入ってくるな」

なんだか嬉しかった。

仁の一番になった気がして。

意識しなくても、自然と口角が上がってしまう。

…あれ、なんでこんなに嬉しいのだろう。

あたしの中のマークは消えていない。

それは嘘偽りのない本当のこと。

だけど、この車の中で仁と笑い合う日が来るなんて、想像していなかったことも本当で。

それを密かに望んでいた自分がいたことは、もっと知らなかった。

考えてなどいなかった。

「…和佳菜?」

いきなり静かになったあたしを不審に思ったのか、仁がこちらを向いた。

その不安げに揺らいだ目を見ると、あたしは笑うしかなかった。