「ちっ」
「はい、舌打ちしない」
「してないのですけど。…空耳じゃないの?」
「嘘つくな」
「ついてません〜」
そうすると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
見れば、ミラー越しで菅谷さんが笑っている。
「…菅谷、静かにしろ」
「失礼しました」
それでもなお、菅谷さんは笑いをこらえていた。
これのどこが面白いのだろう?
「和佳菜様と仁さんはいつも楽しそうですね」
「そんなことはないですよ」
「おい、お前。俺との時間が楽しくねえって言いたいのか?」
「そんなことは言ってないでしょう?そういう問題じゃなくて」
あっはっはっは!
大きなわらい声は、車中にこだました。