「なんでもいい。つか、別にいらねえよ。毎日」
「なんか飲んで行ってもらわないと、ママが納得しないの」
証拠が必要だとかなんとか、色々とうるさいから、最近は、飲みかけのティーカップを2脚並べる事にしている。
単純なママはそれで来たと思ってくれるから。
で、何がいいと、改めて聴くと。
紅茶、という答えが返ってきたので、ティーバッグと、自分用にインスタントコーヒーを入れる。
「毎日電話してんの」
「しなきゃママが怒るから」
昨日しないで寝ようとしたら、電話がかかってきて物凄く怒られた。
という話を聞かせると。
「神経質になってんだな」
仁もママの気持ちが分かるらしい。
あたしは1日くらい無くなっていいのではと、思ったが。
「ねえ、今日も学校行かないで来たの?」
時刻は午前9時を回ったあたり。
今日は平日なのだけど、仁は制服ではない。
グレーのパーカーに黒のジーンズ。
細くてがっちりとした足を引き立たせる、出で立ちだ。
「そうだけど」
「行く気がないの?」
「ねえよ。お前がいない学校なんて、つまんねえし」
そこであたしは何かの違和感を感じた。



