「仁、今日も来たの?」

ママが仕事で出かけたと知ってから。

毎日欠かさずに、あたしが薬を飲むように。

仁もまた、毎日欠かさずに家に来てくれた。

「ああ、お前が薬飲んだか確認しなきゃなんでな」

「言われなくても飲んでるわよ」

「最初はあんなに抵抗したのにな」

「薬なんて、あたしどこも悪くないのに飲むのなんておかしいもの。あんな苦いもの、飲むのは避けたいと思うに決まっているわ」

「俺は嫌いじゃねえけどな」

「あたしは苦手」

「俺、結構好き」

「そんな人、初めて見たわ」

「ああ、滅多にいねえってよく言われる。和佳菜みたく、苦手なやつの方が多いんじゃねえの?」

「そうでしょうね。まあ、上がって。玄関先で長く喋っていたくはないの」

彼をリビングに通すと。

「紅茶と珈琲どちらがいいー?」

とキッチンから叫んだ。