「そうか」

仁は、あたしが信念を貫くことを理解したようで。

それから何も言わないまま菅谷さんが運転する車に乗った。


「…薬、飲んどけよ」

ポツリと、呟いた言葉を偶然あたしの耳は拾った。

「家帰ったら、飲むわ」

「今飲めよ」

「嫌よ。この車を汚すかもしれないし、第一、水がないと飲めないもの」

「…そんなの買ってある」

と言って、どこからか水を取り出した。


「いつの間に…」

「お前が、診察受けてる間に買ったんだよ。俺が飲もうと思ったけど、飲まなかったし」

やる、と言いたいのか、差し出すと。

「離すぞ」

あたしに無理やりつかませた。


「今飲め」

「…飲む気がないの、知っていたからやったのでしょ」

「なんでもいいから飲め」

本当にこの人、嫌な人。

何よ、お人好し。

マークの元に素直に行かせてくれればいいのに。

居場所を知ることだって、この人の家の力を持ってすれば、造作もないことだろうに。

だけど、こうやって、マークからあたしを離して…。


「ねえ、何が目的?」