ドンと、仁が車窓を叩いた。
「あいつはお前を捨てたんだよ。分かれよ、現実を」
「分かりたくないわよ!」
愚かだと、惨めだと。
頭では解っているんだ。
それでも。
“もしかしたらマークが来てくれるかもしれない”
という希望を持たなかったら、あたしはきっと生きていけない。
それほど、貴方に溺れた世界は愉しかった。
その日々に戻りたいと切実に思う。
「なんで、あたしを捜したの。なんで、警察なんか読んだの。あたしは、あのままマークの側に居たかった。半年前、あたしはそれが出来なかったから!」
途中で逃げたから。
だから…。
「警察なんか来なければ、あたしはマークとずっと一緒にいられた」
ママにも、琢磨にも言えなかった。
ホッとした顔をした彼らを見たら何も言えなかった。
だけど、あたしの本心は、そんなものじゃない。
「引き離して、なんて頼んでない。あたしは少しの自由と、大きな愛があればそれでよかったの。マークはそれを、あたしが言わなくても叶えてくれたの!」



