「ちょっとまって。仁はママとしりあいなの?」

「まあ、琢磨さん関係で色々と世話になったからな。だから、ずっと探してた。なのに、全然見つかんねえし。ほんと、どこ行ってたんだ」

「ずっとホテルにいたわ。時々、出かけたりもしたけれども」

そう、殆どをホテルの中で過ごしていた。

今思えば、退屈な生活だったのかもしれない。

だけど、あの時は何故か毎日が楽しくて、とても充実していた。

「あのホテル。マークの会社が多額の金を払うから、されるがままなんだよ。だってスティーブンがいなかったら、あんなホテルとっくの昔に潰れてるからな」

そんな風には見えなかったけれど。

だって、床も壁も綺麗で、掃除がキチンと為されていることを感じさせるし。

従業員だって、少なくはなかったと思う。

だけどその人たちのお金を払ってるのは、マークで。

あたしが好きだった人で。

いや、好きという現在進行形なのか。

今だってよくわからないけれども。

それはなんだか複雑だった。

お金があるか、ないかで人生が決まるということを目の当たりにしてしまったから。

…それも汚いお金で。