「…ずっと、探してたんだ」

黒塗りの高級車内で、仁はひとりでに話し出した。

運転席には菅谷さん。

こんなことさえも懐かしい。



「ずっと?」

「そうだ。琢磨さんに和佳菜を諦めろと言われたあの日から、俺は納得行かなくて、何度も琢磨さんに逢いに行っていた」

琢磨に…?

だけど琢磨、そんな素振りを見せなかった。

「和佳菜があいつに盗られたあの日も、琢磨さんに頼みに行っていた。いない日はしょっちゅうあったから、いつも琢磨さん家の前で待ってた。だけどいつまで経っても、琢磨さんは帰ってこなかった」

「翌日、もうすでに大きなニュースになっていた。和佳菜が、マーク スティーブンに攫われたって、どこの局でも流れてた。和佳菜はミズシマ化粧品の孫娘だから、そうなるのは仕方がない。琢磨さんに問い詰めようと思っても、繋がらなくて」

繋がらないほど、琢磨は大変だったのか。

ママから聞くより、仁から聞いた方がずっと現実味があった。

「やっと連絡が入った時、電話をかけてくださったのは和佳菜のお母様だった」

「ママが…?」

ママはまだまだあたしに話していないことがあるらしい。

「琢磨は瀕死の状態だと、和佳菜は未だに見つからないと。だから、俺に和佳菜を探し出せとお達しがきた」