「…そんな、気もする」
「そうだ」
「あたしはずっと苦しかった。…マークのところに行っても、ママのところに行っても」
今だって分からない。
どうしてこんなに苦しいのか。
どうやったらこの苦しさから解放されるのか。
それでも、貴方に抱きしめられると、ほんのすこし、重たかった鉛のような体が軽くなった。
どんなに苦しくても、貴方を許すことが出来なくても。
それだけが確かなことだった。
「…ただいま、仁」
ホロリと涙がこぼれた。
「おかえり、和佳菜」
貴方の優しい声があたしの胸に強く響いた。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…