「あら、和佳菜。どうしたの?」

ふらりと、リビングに戻ってきたあたしに驚いたようにママが感嘆の声をあげた。

そんな、ママの声が聞こえたような、聞こえないような。

だけどあたしにはよく分からなくて。

ただ、この世からあたしなんかが消えちゃえばいいのに、と思った。

あたしにはそれしかなかった。

ねえ、どうして愛してくれないの?

貴方を求めて、あたしはなにもかも捨ててきたのに。

ふらりふらりと、覚束ない足取りで向かったのは、戸棚。

そこには勿論。

あたしの欲しいものもある。


「…和佳菜!何やってるの!」



包丁の刃を自分に向けて持ったあたしを、慌てて止めたのもママで。

泣いてくれているのも、ママだった。




…あの人じゃ、なかった。