実際には、あたしは何も知らなくて。
警察官の思い過ごしで、事なきを得たけれど。
…それからかもしれない、あたしの感情の部分がおかしくなったのは。
「和佳菜!」
その時ドアが大きな音を立てて開いて。
「…琢磨、無事だっ」
あたしの言葉は遮られる、…目の前の優しい男に。
「無事でよかった!本当に良かった」
「琢磨…、息が苦しい。その手緩めて」
ああ、ごめん、と彼はあたしに謝って、そっと離してくれた。
だけど苦しいくらいのハグが今のあたしには暖かかった。
「琢磨、無事だったの…」
「俺は、ちょっとちょっかい出された程度でその日に戻れたけど、…お前が、まだ帰っていないって聞いて」
「ごめんなさい、心配かけて」
「いや、もういいんだ。早く帰ろう、お祖父様も随分と心配してたんだけど、このところ体調が優れなくて」
と、その時、ガチャリとドアが開いて、2人目の来客が現れた。