ある日の昼下がり、いつものように洗濯機を回して、お風呂を洗っていると。
ドカンと、大きな音が聞こえた。
「え……?」
「警察だー!そこを動くな!」
け、警察?
沢山のスーツ姿の人達がなだれ込むように、人が押し寄せて。
誰もいないリビングに、我先にと入っていく。
「水島和佳菜さんですね、よかった無事で」
その中で私を見つけた婦警さんは心底ホッとした表情を浮かべていた。
「無事って、どういうことですか?」
「え?貴女監禁されていたんですよ。ご家族も大変心配されていましたよ」
ご家族…ああ、そっか、私お祖父様の目の前で連れ去られたから、お祖父様が躍起になるのも致し方ない。
その時。
「マーク スティーブンはどこだ!」
若干目が充血している疲れた気なおじさんが、私にそう聞いた。
というか、怒鳴った。
「…この時間は、仕事だと」
「いない!同時刻に突入した連中が、マーク スティーブンと、アラン スティーブンだけがいないと連絡が入ったんだ!心当たりはないのか!」
アラン スティーブンとは、マークのお父様の名前。
え、お父様もいないの?
「ない、です……」
残念ながら、私は何も知らなかった。
刑事さん、ごめんなさいね。
役に立たなくて。
…ああ、数ヶ月前とまるで同じ。
置いていかれて、ようやく現実をみる。
あれが夢だったと思い知らされる。
同じことを繰り返す私は愚か者。
こうやって自己嫌悪に苛まれて、苦しんで。
あの国を、アメリカを、出た思い出はいつのまにか消えていたらしい。
2ヶ月と少しを、あたしは無駄にしたんだ。



