悲しくない、わけではない。
勿論悲しい。
だけど、あたしは、セブがそういう理由を知っているから。
マークに恩があって、それを一生を終えるまで捧げると決めたその理由を、あたしは覚えているから。
だから、あたしは強くセブを責めることができなかったのだ。
…ねえ、セブ。
あたし、貴方とあったのはホテルで監禁まがいのことをされた時が最初じゃないのよ。
きっと貴方は覚えていないだろうけど。
あたしは……。
[…………さま。……な、様。……ワカナ様!]
「……え……?」
[ワカナ様、着きました]
[…ありがとう]
いつのまにか眠っていた私を、セブが機械的に起こしてくれた。
朝見たときの柔らかい表情とは比べものにならないほど硬かった。



