「なんで?知りたいことが分かるんだ。お前にとってこれ以上いい機会はないだろ?」
「別にどこかに行かなければならないのなら、知らなくても構わないわ」
そこまでして知る価値のないものだろう、どうせ。
「校内案内は口実だったわけね」
「そういうわけでもねえよ。校内を知っておきたいのは、本当。今回のことは、そのついでってだけ」
「だけど流梨花に声を掛けたのは意図的でしょう?流梨花が、松田先生に頼まれても頼まれていなくてもどっちにしろ流梨花に頼むつもりだった」
「まあ、そうだな。男が嫌いなあのこが、お前を連れてくるのは分かってたからな」
流梨花は、友達と一緒に行動するのが好きなタイプだ。
特に流梨花の苦手分野である男子については、1人で案内なんてすることはできないのだ。
そこまで見越してあたしに声がかかるようにしたのだ。
姑息なやつ。
初めと随分印象が変わってきた。
やはり、相当嫌なやつかもしれない。
思慮深く、人とは違う視点でものを感じ、見ることが出来る人。
面倒なやつと出会ってしまったなあ。