まだ途中のディナーを残して、私の手を取ると、引き寄せるように歩き出した。
ホテルを出ると、セブさんが目の前の車のドアを開けてくれた。
ずっとここで待っていたかのように、佇んでいた車のドアを。
走ること、20分ほど。
[ここで見ていよう]
と言って、車を停めたのは。
「なんで…」
ラブホテルの前だった。
[…さあ、これから君は僕の物になるよ]
そんな悪魔の囁きさえ、私の耳に届かないほど。
私は、窓に張り付いていた。
それから、すぐに。
来た人がいた。
女の子と腕を組んで仲良く楽しそうにその建物の中に入っていく。
「あれって……」
見間違えるはずがない。
だって、あれは。
「仁……」
総長さんだったから、獅獣の。



