どれだけ苦しくても、みんなのことを考えれば、辛くなかった。
どれだけ泣いても、みんなのことを考えれば、立ち直ることができた。
だから、今もこうしてどこかでみんなと会えることを祈って、チャンスを探して。
暗闇を生きている。
[…和佳菜?]
その声でハッとした。
忘れていた、今はホテルの最上階にあるレストランで食事中だった。
相手は勿論。
「ごめんなさい、ぼうっとしていたわ」
マーク。
[最近の君はぼうっとしていることが多くなったね。どうかしたの?]
「いえ、何もないけれど」
[そう…それならいいんだ]
英語と日本語の会話って、はたから見たら随分とおかしい。
変な人たちだと思われるかもしれないけれど、そんなことを思う人はここにはいない。
何故ならここは貸切で、ホテルの利用者はおろか、スタッフさえも決められた人間しか入ることが許されないほど厳重で。
いかにマークが位の高い人間であるかを、また思い知らされた。



