[ごめんなさい。なんでもないわ]
[ワカナ様も早く寝るといい。明日もあるでしょうから]
分かったと、彼に笑顔を見せてドアを閉めた。
仁、綾、翔、悠人…。
獅獣のみんな。
懐かしい人達が脳裏に浮かぶ。
帰りたいなあ…。
そんなこと考えないようにしていたのに、ひさびさに思い出してしまった。
ねえ、みんな誤解しないでね?
これは演技だから。
この人を騙しやすい方法で、思いついたのがこれしかなかったの。
だから怒らないで?
それから1人で小さく笑った。
…もう、仲間じゃないのに。
なのに、どうして考えてしまうのだろう?
理由なんてとっくに分かっていた。
だけど、それを頭の中で言葉としておもい出しはしなかった。
きっと、…帰りたくなってしまうから。
明日からは、また何も考えないでおこう。
琢磨の為にも、みんなの為にも。
だけど、今日だけ、あたしは。
みんなを想って泣いてもいい、よね?
「うっふ……ぅぅう……っううぅ」
ドアにもたれかかりながら、静かに泣いた。



