[ありましたっけ?]
[ほら、確かここでマークとディナーを楽しんでいた時に。セブ、貴方は記憶力が良いから覚えていると思ったのだけど]
彼は少し考えてから。
[…そうでしたね。このホテルの前で暴れていた少年らが警察に取り押さえられたとか。この頃何かと物騒ですね」
『あいつ、いつも金曜日に暴れるんだよ』
綾の声が耳の奥で聞こえた。
[セブ、今日は何曜日…?]
[今日、ですか?]
[ええ、今日よ]
[…金曜日、ですけど]
暴れている、と思った。
仁が、しばらく会っていないあの仁が。
『和佳菜、戻ってこいよ』
「えっ?」
[…ワカナ様?どうかなさりましたか?]
目の前にはキョトンとしたセブしかいない。
セブは英語しか喋れない。
だけど、今一瞬…仁の声が聞こえた気がした。
気のせいかしら…?



