[ただいま]


聞き慣れた独特の発音が、響くと共にドアの開く音がした。

途端に妙に緊張しだす。

下手な真似をしないか、あたしにはまだまだやることが残っている。

貴方に溺れて、どうしようない人間になんかならない。

なりたくない。

そのためにはうまく切り抜けていく必要がある。

あともう少し。

それまで、どうか…。


「おかえり」

[今日もどこにも行かなかったみたいだね]

「行かないわよ。セブさん、私の買い物ついて行くのたいへんそうなの。このところ毎日セブさんが担当でしょう?マーク、雇い主としてどうなの?」

[セブ以外に、やってくれる人がいないんだ。…いや、やらせていい者って言った方が正しいのかな]

「どういうこと?」

[うちのワカナに惚れない自信がある人。そういないだろ?]

「惚れない自信って。そんなに私、モテないわよ」

[それはワカナが自覚してないだけだよ。君が、いつも男性の視線を釘付けにしてるのを。僕、取られないかヒヤヒヤしてたのに]

「何言ってるの、第一私は、貴方の物よ?彼らがいくら言いよったって、それは変わらない」

そういえば、彼は満足そうに微笑んで。

[昨日の続きをしようか]

と、あたしをベッドに誘った。