「昨日の続き、する?」
ニヤリと笑った彼を本気にはしなかった。
「しようと思っても、出来ないでしょ。貴方は、仕事なんだから。ほら、もうすぐデイビッドが来る時間よ」
秘書のデイビッドは、マークのお世話役。
あたしも何度も会ったことのある、優秀な秘書だ。
「…ああ、仕事なんか無くなればいいのに」
「そうは言わないで。お義父様だって、マークに期待しているのでしょうから」
「期待なんかされたくないよ」
「ずっと期待されているのも苦しいでしょうけど、期待されなくなると悲しいものよ。それに、私はいつだってここで待ってる。貴方の癒しになれるかは、分からないけど」
「君は僕の癒しさ、ワカナ。…もう居なくならないでくれ。心配したんだ」
「ごめんなさい。もうしないわ」
軽く触れるだけのキスをあたしによこすと、マークはふわりと笑った。
「じゃあ、行ってくる。……愛してるよ、ワカナ」
「私もよ、マーク」
そうして、マークはデイビッドが来ているだろうホームに向かった。



