「向こうに行ったら、いくらでも喋るわ」
それはマークと英語で会話をする事だった。
彼はアメリカ人で、生まれも育ちもアメリカ。
だから当然日本語を使うより断然英語を話す方が楽なので、今もあたしに英語で話しかけている。
だけど、あたしがそれを同じ言葉で返すことはしなかった。
マークはそれがとても気に入らないようで、マークに連れ去られたその日から1ヶ月経った今日までずっと同じことを言いつづけている。
[何故喋ってくれないの?]
彼は不満げにそう言ったけれども、あたしはにこりと微笑むだけで決して言葉にしなかった。
朝、一夜を共にしたその日の朝でさえも。



